紙の手形廃止とは?最終振出期限後の支払手段と資金繰り対策|取適法

オフィスレナセル

 

「紙の手形が使えなくなると聞いたが、うちの支払いはどうなるのか」。結論から言うと、紙の手形・小切手は2027年3月31日をもって電子交換所での交換が廃止され、それより前に、期限を公表している金融機関の多くが2026年9月30日を最終振出期限に設定しています。期限を設定した金融機関では、期限より後に振り出した手形・小切手は、原則として当座勘定から支払われません(9月30日が期限なら、2026年10月1日以降に振り出したもの)。支払手形を使っている会社は、振込か「でんさい」などの電子記録債権への切り替えを急ぐ必要があります(期限を設けていない金融機関でも、全国銀行協会は早めの切替えの検討を呼びかけています)。注意したいのは、手形を振込に切り替えると、手形の期日まで待ってもらえていた分の支払いが前倒しになり、一時的に資金繰りが苦しくなりやすいことです。この記事では、法人・会社向け借金再生コンサルティングのオフィスレナセルが、紙の手形廃止のスケジュール、切り替え先の選び方、取適法(旧・下請法)との関係、切り替えで生まれる資金繰りの穴の見積もり方を解説します。

紙の手形廃止とは?いつ、何が変わるのか

2027年3月31日で電子交換所の手形・小切手の交換が廃止

全国銀行協会は2026年6月18日に、電子交換所における手形・小切手の交換廃止時期を「2027年3月31日」とすることを明確化しました。紙の手形・小切手の利用廃止は、政府方針をもとに産業界・金融界が連携して進めている取組みで、同協会は、でんさい等の電子記録債権やインターネットバンキングによる振込等への切替えの検討を呼びかけています。

なお、同協会は「2027年4月1日から手形・小切手が使用できなくなるものではありません」とも説明しています。ただし、2027年4月1日からは電子交換所を介さない決済となり、各金融機関で郵送等による相対決済が必要になるため、金融機関の判断により、手形・小切手の取扱い可否等が変更となる可能性がある、としています。「2027年4月から法律で手形そのものが使えなくなる」という話ではなく、銀行の決済の仕組みとして、紙の手形が実務上使いにくくなっていくと理解するのが正確です(ただし、取適法の対象取引では、後述のとおり手形での支払いはすでに認められていません)。

期限を公表した金融機関の多くは2026年9月30日が最終振出期限

実務上の締め切りは、2027年3月より前に来ています。全国銀行協会は、期限の設定を公表している金融機関の多くが、2026年9月30日を最終振出期限に設定しており、当該金融機関においては2026年10月1日以降に振り出された手形・小切手については、原則、当座勘定からの支払ができない、と案内しています。同協会のウェブサイトには、各金融機関が設定した最終振出期限の一覧も掲載されています(一覧には作成時点があり、公表後すぐに反映されるものではない旨の注意書きがあります)。

最終振出期限は金融機関ごとに違います。自社が当座預金を持っている金融機関が、いつを期限にしているかを、一覧と取引金融機関の窓口の両方で確認してください。

期限前に振り出した手形・受け取った手形の扱い

全国銀行協会は、多くの金融機関が2027年3月を待たずに前倒しで手形・小切手の取扱いを縮小する動きを示しているとし、その例として手形帳・小切手帳の発行終了や、2027年4月以降を期日とする手形等の代金取立受付の終了を挙げています。すでに振り出した手形や、手元にある受取手形がどう扱われるかは、期日や金融機関によって変わる可能性があります。期日が2027年4月以降になる手形がある場合は、特に早めに取引金融機関へ確認しておきましょう。

手形からの切り替え先は「振込」か「でんさい」

全国銀行協会が切替え先として挙げているのは、でんさい等の電子記録債権と、インターネットバンキングによる振込等です。どちらを選ぶかで、資金繰りへの影響が変わります。

振込:手形サイトがなくなる分、支払いが早まる

振込は、仕組みとしてはいちばん単純です。手形の郵送や取立ての手間もなくなります。一方で、これまで「月末締め・翌月末に90日の手形」のように支払っていたものを「翌月末の振込」に変えると、手形の期日までの期間(手形サイト)の分だけ、お金が出ていくタイミングが早まります。仕入先にとっては早く現金が入るので歓迎されやすい一方、支払う側の資金繰りには負担がかかります。

でんさい:期日を決めて支払う電子記録債権

でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が扱う電子記録債権で、手形に代わる電子的な決済手段です。でんさいネットは、手形と異なり印紙税は課税されないこと、支払期日になると受取側の口座に自動的に入金されること、受け取った側は分割して譲渡や割引をすることで資金繰りに活用できることなどを特徴として挙げています。利用するには、取引のある金融機関(でんさいネットの参加金融機関)での申込みが必要です。

でんさいも期日を決めて支払う手段なので、手形に近い感覚で使えます。ただし、でんさいも期日に支払えなければ「支払不能」となり、6か月以内に2回以上生じると、取引停止処分(手形の取引停止処分に似た制度で、債務者としてのでんさいネットの利用と、参加金融機関との貸出取引が2年間禁止)の対象になります。この仕組みは支払いが回らないときの優先順位|給与・税金・銀行返済・仕入先の考え方で詳しく説明しています。

取適法の対象取引では「長いサイト」のまま移せない

「紙の手形をでんさいに置き換えれば、今までどおりのサイトで払える」と考えがちですが、製造や修理などを中小の事業者に委託している場合は注意が必要です。2026年1月1日に施行された取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律。旧・下請法)の対象取引では、次のようなルールがあります。

▶ 支払期日は受領日から60日以内
同法第3条は、代金の支払期日を、給付を受領した日から起算して「六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において」定めなければならないとしています。

▶ 手形の交付は支払遅延に含まれる
同法第5条第1項第2号は、代金を支払期日の経過後なお支払わないことを禁止し、その括弧書きで、代金の支払について「手形を交付すること」と、手形以外の支払手段であって支払期日までに代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用することを含めています。

▶ でんさいも、支払期日より後に満期が来るものは通常NG
公正取引委員会の「よくある質問コーナー(取適法)」では、満期日・決済日等が代金の支払期日より後に到来する電子記録債権について、委託事業者が割引料等を負担することとする場合であっても、通常は本法違反となると考えられる、と示されています。

つまり、取適法の対象取引では、紙の手形の廃止を待たずに、すでに手形で支払うこと自体が支払遅延として禁止され、でんさい等でも支払期日より後に満期が来るものは通常認められません。対象になるかどうかは、取引の内容と双方の資本金・従業員数によって決まるため、公正取引委員会の資料で確認するか、専門家に相談してください。対象外の取引でも、支払条件の変更は取引先と話し合って決めるものです。

切り替えで生まれる資金繰りの穴と、事前の見積もり方

支払手形を振込(または短いサイトのでんさい)に切り替えるとき、見落とされやすいのが切り替え直後の「二重払い期間」です。

例えば、毎月の仕入代金を「月末締め・翌月末に90日サイトの手形」で払っていた会社(取適法の対象取引であれば、2026年1月1日以降に委託した分からは、この払い方自体が認められていません)が、ある月の仕入分から「翌月末の振込」に切り替えたとします。切り替え後しばらくは、切り替え前に振り出した手形の期日が順番に来る一方で、新しい仕入分の振込も始まります。仕入額が毎月同じだと仮定すると、およそ3か月のあいだ、毎月2か月分の支払いが重なる計算になり、手形サイトの期間分(この例では約3か月分)の仕入代金を、前倒しで用意しなければなりません。この間も、振出済みの手形は期日に決済できなければ不渡りとなり、6か月間に2回の不渡りで取引停止処分(2年間、参加銀行との当座預金取引・貸出取引が禁止)の対象になります。すでに不渡りを出したことがある会社は、特に手形の期日の資金を先に確保してください。

この穴は、切り替えを決めた時点で数字にしておくことができます。手順は次のとおりです。

  1. 振出済みの支払手形を、期日・金額ごとに一覧にする
  2. 切り替え後の支払条件(振込日・でんさいの期日)で、今後の仕入・外注の支払予定を組み直す
  3. 1と2を資金繰り表に並べて入れ、月ごとの資金残高の底がいつ・いくらになるかを確認する

資金繰り表の作り方と金融機関への見せ方は、資金繰り表の作り方と銀行への見せ方で解説しています。

試算して資金が足りない見込みになったら、足りなくなる前に取引金融機関へ相談することが大切です。全国銀行協会のチラシでも、事業者の電子化支援や資金繰り支援等のサポートを行っている金融機関がある旨が案内されています。支払が始まってから慌てて相談するよりも、「切り替えに伴って、いつ、いくら不足するか」を資金繰り表で示したうえで相談するほうが、金融機関も判断しやすくなります。既存の借入の返済と重なって資金が回らない場合は、リスケジュールの仕組みと交渉のポイントも参考にしてください。

手形を受け取っている会社の注意点

受取手形を割り引いて運転資金にしていた会社は、入金の形が変わります。

▶ 期限後に振り出された紙の手形は資金化できない場合がある
全国銀行協会は、最終振出期限以降に振り出された手形・小切手を受け取った事業者は、資金化できない場合があると注意を呼びかけています。取引先から紙の手形が届き続ける場合は、振出日と振出元の金融機関の期限を確認し、支払方法の切り替えを相談しましょう。

▶ でんさいで受け取れば、分割・割引で資金化しやすい
でんさいは受け取った債権を分割して譲渡・割引ができるとされています。受取側もでんさいを使えるようにしておくと、取引先の切り替えに合わせやすくなります。

▶ 取適法の対象取引なら、60日以内の支払いが前提
自社が中小受託事業者として受注している取引が取適法の対象なら、代金は受領日から60日以内の支払期日に、支払期日までに満額の現金を受け取れる形で支払われることが前提になります。売掛金の回収サイトを見直す考え方は、運転資金とは?在庫と売掛金の圧縮で資金繰りを改善する考え方を解説をご覧ください。

紙の手形廃止に向けた実務チェックリスト

  1. 当座預金のある金融機関の最終振出期限を確認する(全国銀行協会の一覧+窓口)
  2. 振出済みの支払手形・手元の受取手形を、期日ごとに一覧にする(2027年4月以降の期日に注意)
  3. 取引先ごとに、取適法の対象取引かどうかを確認する
  4. 切り替え先(振込・でんさい)と新しい支払条件を決め、資金繰り表で不足額を試算する
  5. 不足が見込まれるなら、切り替え前に(最終振出期限をすでに過ぎている場合はすぐに)取引金融機関へ相談する
  6. 仕入先・得意先に、切り替えの時期と方法を案内する(全国銀行協会も導入の流れに「取引先へご案内」を挙げています)

出典:全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」「電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について」(2026年6月18日)「電子交換所」「手形交換制度」、同協会チラシ「紙の手形・小切手利用廃止へ」、でんさいネット「でんさいとは」「取引停止処分とは何ですか。」、公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(第3条・第5条)をもとに、当社で要約・編集して作成しました。

手形の切り替えと資金繰りは、オフィスレナセルにご相談を

支払手段の切り替えそのものは事務の話ですが、資金に余裕のない会社にとっては、切り替え直後の数か月が資金繰りの山場になることがあります。「振出済みの手形の期日と新しい支払いが重なると、どこで資金が足りなくなるのか」「金融機関にどう説明すればよいか」を、切り替えの前に整理しておくことが大切です。

オフィスレナセルは、法人・会社の借金問題に向き合う事業再生コンサルティングとして、資金繰りの実態把握から経営改善のプランニング、金融機関との対話まで、経営者に伴走してご支援します。なお、取引が取適法の対象になるかといった法律判断は弁護士が、税務の判断は税理士が担う業務です。当社はその前段の整理と、必要に応じて専門家へつなぐところをお手伝いする立場です。まずはお問い合わせからお気軽にご相談ください。

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【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。手形・小切手の最終振出期限や取扱いは金融機関ごとに異なり、変更されることがあります。また、取適法の適用の有無は取引の内容や当事者の規模によって異なります。実際の支払手段の切り替えや取引条件の変更にあたっては、取引のある金融機関にご確認いただき、あわせて認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。