「もう会社をたたむしかないのか」――借金の返済が行き詰まったとき、多くの経営者が頭に浮かべるのが「破産」という言葉です。しかし、破産だけが選択肢ではありません。民事再生法に基づく「民事再生」という手続きを使えば、事業を続けながら借金を整理できる可能性があります。この記事では、民事再生と破産の違いを、会社を残したい中小企業経営者の視点で解説します。
民事再生と破産の最大の違い――「会社を残すか、終わらせるか」
民事再生と破産はどちらも裁判所を利用した法的整理手続きですが、その目的はまったく異なります。
▶ 民事再生(再建型)
民事再生法第1条に定められているとおり、その目的は「債務者の事業又は経済生活の再生を図ること」です。会社を存続させたまま、裁判所の監督のもとで債務を減額・分割返済する再生計画を作成し、債権者の同意と裁判所の認可を得て事業の立て直しを目指します。
▶ 破産(清算型)
破産法に基づく手続きで、会社の全資産を現金化して債権者に配当し、最終的に会社を消滅させます。再建のめどが立たない場合に選択されるのが一般的です。
つまり、「会社を残して事業を続ける」のが民事再生、「会社を終わらせる」のが破産です。この違いが経営者にとって最も重要なポイントです。
経営権はどうなる?──民事再生なら経営者が続投できる
民事再生:経営者が引き続き指揮を執る
民事再生では、債務者(会社)は原則として業務遂行権と財産管理処分権を失いません(民事再生法第38条第1項)。裁判所が選任する「監督委員」の監督を受けながらも、経営者自身が事業の運営と再建に取り組むことができます。長年培ってきたノウハウや取引先との信頼関係をそのまま活かせるのは大きなメリットです。
破産:管財人が財産を管理・処分する
一方、破産では裁判所が選任する「破産管財人」に財産の管理処分権が移ります(破産法第78条第1項)。経営者は経営権を失い、事業も原則として停止します。従業員は全員解雇となり、取引先との契約関係も清算されます。
手続きの流れと期間の違い
民事再生の流れ(申立てから約半年)
民事再生は以下の流れで進みます。
① 裁判所への申立て・監督委員の選任
② 再生手続開始決定(申立てから約2週間)
③ 債権届出・財産評定
④ 再生計画案の作成・提出
⑤ 債権者集会での決議(議決権者の頭数の過半数+議決権総額の1/2以上の賛成が必要/民事再生法第172条の3)
⑥ 裁判所の認可
⑦ 再生計画に基づく返済の開始
申立てから認可まで約半年が目安です。この間も事業は継続できますが、仕入先との取引は現金決済が基本となり、資金繰りに余力がないと手続き自体が成り立ちません。
破産の流れ
破産は申立て後、破産管財人のもとで財産の調査・換価・配当が行われ、最終的に会社が消滅します。規模にもよりますが、数ヶ月から1年程度で手続きが完了するのが一般的です。
民事再生を選べる条件──誰でも申し立てられるのか?
民事再生法第21条第1項では、申立ての要件として以下のいずれかを定めています。
① 破産手続開始の原因となる事実が生じるおそれがあるとき(支払不能や債務超過のおそれ)
② 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき
つまり、「完全に支払不能になってから」ではなく、「このままでは危ない」という段階で早めに申し立てることが可能です。逆に言えば、資金が完全に尽きてからでは予納金(裁判所に納める手続費用)が払えず、民事再生を選べなくなるリスクがあります。
予納金は負債額によって異なりますが、中小企業の場合でも数百万円程度が必要です。手元資金に余裕があるうちに判断することが重要です。
破産しか選べないケースもある
以下のような場合、民事再生ではなく破産を選ばざるを得ないこともあります。
▶ 本業が赤字で、返済の見込みが立たない場合
再生計画の実現可能性がないと裁判所に判断されると、申立て自体が棄却されます。
▶ 予納金を納める資金がない場合
手続費用が払えなければ、民事再生を始めることができません。
▶ 債権者の協力が得られない場合
再生計画は債権者の多数決で可決される必要があるため、主要債権者の反対が強いと計画が通りません。
だからこそ、「破産しかないかも」と思い詰める前の段階で、民事再生を含めた選択肢を専門家に相談することが大切です。なお、裁判所を使わない「私的整理」という方法もあります。詳しくは下記の記事もあわせてお読みください。
→ 私的整理とは?裁判所を使わずに会社の借金を整理する方法
会社の借金問題は、オフィスレナセルにご相談ください
「民事再生を検討すべき段階なのか」「まだ私的整理で間に合うのか」「そもそも何から手をつければいいのか」――こうした判断は、借金再生の実務を知るコンサルタントと一緒に整理するのが最も確実です。
オフィスレナセルは、法人・会社向けの借金再生コンサルティングを専門としています。経営者のお話をじっくりお聞きしたうえで、破産以外の選択肢も含めた最適なプランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。記載内容は執筆時点の法令に基づいています。


