「返済が苦しいけど、放っておけばそのうち時効で消えるのでは?」──借金に苦しむ経営者の中には、こう考える方が少なくありません。しかし結論から言えば、会社の借金を放置して時効で逃げ切ることは、実務上ほぼ不可能です。放置すれば督促・訴訟・差押えと段階的に状況が悪化し、事業の継続そのものが危うくなります。この記事では、放置した場合に実際に何が起こるのかを時系列で解説します。
会社の借金の時効は何年?
2020年4月1日に施行された改正民法(第166条)により、債権の消滅時効は「権利を行使することができることを知った時から5年間」または「権利を行使することができる時から10年間」に統一されました。銀行や金融機関からの借入であれば、返済期日を貸主は当然把握しているため、実質的な時効期間は返済期日から5年です。
なお、2020年3月31日以前に成立した借入については旧民法・旧商法が適用され、商事債権(旧商法第522条)は5年、それ以外は原則10年となります。
「5年逃げ切ればいい」が通用しない理由
消滅時効は、期間が経過するだけでは成立しません。債務者が「時効の援用」(時効を理由に支払いを拒否する意思表示)を行って初めて効力が生じます。そして、金融機関は時効の完成を阻止するための手段を持っています。
▶ 時効の更新(旧「中断」)
裁判上の請求(訴訟提起)、差押え、債務の承認(一部返済や支払猶予の依頼を含む)があると、それまで進行していた時効はリセットされ、ゼロから再スタートします。銀行や信用保証協会は5年以内に何らかの法的手段を取ることが一般的であり、放置していれば時効が完成するケースはごく稀です。
▶ 時効の完成猶予
改正民法では、内容証明郵便による催告で6か月間の時効完成猶予が認められています(民法第150条)。また、協議を行う旨の書面合意により時効の完成を猶予する制度も新設されました(民法第151条、1年ごとの再合意で通算5年まで延長可能)。債権者はこれらの手段を組み合わせて時効の完成を防いできます。
借金を放置すると何が起こるか──時系列で解説
段階①:督促状・催告書の送付
返済が滞ると、まず金融機関から電話や書面で督促が届きます。それでも返済がなければ、内容証明郵便で「催告書」が送られてきます。この催告は、前述のとおり時効の完成を6か月間猶予する法的効果を持ちます(民法第150条)。届いた書面を無視してはいけません。
段階②:期限の利益の喪失
融資契約には通常、返済を一定期間怠った場合に「期限の利益を喪失する」条項が含まれています。期限の利益を喪失すると、残債の全額を一括で返済する義務が発生します。月々の分割返済ではなく、借入残高の全額を即座に求められる状態になるということです。
段階③:訴訟提起・支払督促
任意の交渉で回収できないと判断した場合、債権者は裁判所に訴訟を提起するか、支払督促を申し立てます。判決が確定すると、たとえ元の時効期間が5年であったとしても、確定判決による権利の時効期間は10年に延長されます(民法第169条)。
段階④:強制執行(差押え)
判決に基づき、債権者は法人の財産に対して強制執行を申し立てることができます。差押えの対象となるのは、法人名義の預金口座、売掛金、在庫、設備、不動産などです。取引先からの入金が差し押さえられれば、事業の継続は事実上困難になります。
また、経営者個人が連帯保証人になっている場合は、個人資産(自宅・預金等)も差押えの対象になります。資金繰りが厳しくなった段階での対処法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 資金繰りが厳しいとき、まず何をすべきか?経営者がやるべき3つのステップ
放置ではなく「早期の相談」が会社を守る
借金を放置して状況が好転することはありません。しかし、早い段階で専門家に相談すれば、リスケジュール(返済条件の変更)や私的整理など、会社を存続させながら借金を整理する方法が残されています。
特に、督促状が届いた段階であれば、まだ交渉の余地があります。訴訟や差押えに進んでしまうと、選択肢は大幅に狭まります。「まだ大丈夫」と思っているうちに動き出すことが、結果的に会社と経営者自身を守ることにつながります。
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オフィスレナセルは、借金問題を抱える中小企業の経営者に向けて、会社の借金再生に特化したコンサルティングを提供しています。「返済が苦しいけど、どこに相談していいかわからない」という段階でも構いません。現状を整理し、どのような選択肢があるのかを一緒に考えます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を行うものではありません。個別の事案については、弁護士等の専門家にご相談ください。記事内の法令・制度情報は2025年5月時点のものです。
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