「銀行にリスケ(返済条件の変更)をお願いしたいが、手ぶらで相談に行っていいのか?」「何を準備していけばいいのかわからない」──借入返済で悩む経営者からよくお聞きするご質問です。
結論から申し上げると、銀行との交渉は「準備した資料の質」で8割が決まります。今回は、リスケや条件変更の交渉に臨む前に必ず揃えておくべき5つの資料を、実務の視点から解説します。
なぜ「資料」が交渉の成否を分けるのか
銀行がリスケや条件変更に応じるかどうかは、最終的に稟議(りんぎ)で決定されます。融資担当者がどれだけ味方についてくれても、担当者一人では決められません。支店長、さらには本部審査部まで上がる稟議書に、「返済猶予が妥当である」と判断させる材料が必要なのです。
その材料こそが、経営者が提出する各種資料です。口頭の説明だけでは稟議書に盛り込めず、担当者も上司を説得できません。「資料がない=検討のテーブルにも載らない」のが実情です。
銀行交渉で準備すべき5つの資料
① 経営改善計画書
銀行交渉において最も重要な資料です。リスケに応じてもらう代わりに、「どのように経営を立て直すのか」を具体的な数値で示します。
中小企業向けに銀行が求める一般的な要件は次のとおりです。
・計画期間はおおむね5年以内
・計画終了時点で債務超過が解消していること
・売上・利益の計画達成率が8割以上見込めること
・実現可能性の高い具体的な改善策が盛り込まれていること
「売上を伸ばします」といった抽象的な表現では通りません。新規顧客の商談状況、経費削減の具体策、人員計画など、数字の根拠を添えて記載することが大切です。
▶ 関連記事:経営改善計画書の作り方|銀行が納得する書き方のポイント
② 資金繰り表(実績+予定)
「返済をこのまま続けるとどうなるか」「返済を猶予すればどう変わるか」を一目で示せる資料です。銀行はここを最重視します。
資金繰り表で押さえるべきポイントは次のとおりです。
・過去6ヶ月〜1年分の実績と、今後6〜12ヶ月の予定を並べる
・「リスケなし」と「リスケあり」の2パターンを作成する
・経常収支がプラスになる計画であること(本業で儲かっていることを示す)
・月末残高がマイナスにならない現実的な数字にする
経常収支がマイナスの計画だと「本業が成り立っていない」と判断され、支援対象から外れやすくなります。ここは特に丁寧に作り込みましょう。
③ 直近の試算表(月次)
決算書は過去の情報にすぎません。銀行が知りたいのは「今、現時点でどんな経営状況なのか」です。そこで必要になるのが月次試算表です。
・直近3ヶ月分の月次試算表を用意する
・最低限、貸借対照表と損益計算書の両方を添付
・できれば直前期末と比較できるフォーマットにする
決算から半年以上経っている会社は、銀行から「試算表を出してください」と必ず求められます。日頃から月次決算を回しておくことが、有事の際の武器になります。
④ 借入金一覧表(全銀行分)
自社が取引しているすべての金融機関の借入明細をまとめた資料です。銀行1行だけにリスケを依頼しても、他行と返済条件が不均衡だと審査が通りません。
借入金一覧表に記載すべき項目は以下のとおりです。
・金融機関名・支店名
・借入契約日・返済期日
・当初借入額・現在の残高
・金利(適用利率)
・保証の有無(信用保証協会付き/プロパー融資/代表者個人保証の有無)
・月々の返済額
この資料を見て、銀行は「各行が公平にリスケに応じる前提になっているか」を判断します。メインバンクだけを優遇するような条件提示は通用しません。
⑤ 返済猶予依頼書(条件変更依頼書)
リスケの正式な申込書類です。「いつから・どれくらいの期間・どのような条件で」返済を猶予してほしいのかを明記します。
銀行がリスケに応じる期間は通常6ヶ月〜1年が一般的で、それ以上の長期間を一度に認めることはほぼありません。この前提を理解したうえで、現実的な期間を設定しましょう。
また、「元金返済を一時的に停止して利息のみ支払う」「月々の返済額を半額にする」など、具体的な条件変更案を自社から提示することで、交渉がスムーズに進みます。
資料準備の注意点
情報はすべて開示する
銀行に提出する資料では、悪い情報も含めて正直に開示することが鉄則です。税金や社会保険料の滞納、仕入先への支払い遅延、ノンバンクからの借入など、経営者が隠したくなるような情報ほど、後から発覚すると一気に信頼を失います。
専門家のサポートを早めに受ける
これら5つの資料を経営者一人で作り込むのは現実的ではありません。特に経営改善計画書は、銀行の審査目線を踏まえた書き方のコツがあり、素人では見落としがちなポイントが多くあります。
中小企業庁が認定する「認定経営革新等支援機関」に登録された税理士・会計士・コンサルタントであれば、銀行との交渉経験も豊富です。自社の状況に合わせた書類作成や交渉同席など、実務面でサポートを受けられます。
銀行交渉のご相談はオフィスレナセルへ
オフィスレナセルは、中小企業の借金再生・経営改善を専門にサポートするコンサルティングファームです。銀行交渉に必要な5つの資料の作成から同席交渉まで、経営者に伴走してご支援します。
「銀行からリスケを迫られているがどう対応すればいいかわからない」「計画書の書き方に自信がない」──そんな状況でこそ、早めのご相談をお勧めします。初回相談は秘密厳守で対応いたします。
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。実際の銀行交渉や経営判断にあたっては、必ず認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。


