
「顧問税理士から405事業を勧められたが、ポスコロ事業とは何が違うのか」——経営改善計画の策定を専門家に依頼するとき、この2つは混同されがちです。結論から言えば、405事業は「金融支援を伴う本格的な経営改善」が必要な会社向け、Vアップ事業(旧ポスコロ事業)は「資金繰り管理など基本的な経営改善」に取り組む会社向けで、補助の上限額も大きく異なります。中小企業庁が公表している内容にもとづいて整理します。
まず結論|405事業とVアップ事業の違い
いずれも、国が認定した税理士などの専門家である認定経営革新等支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定し、その費用の3分の2が補助される制度です。窓口は都道府県の中小企業活性化協議会で、違いは「どの段階の会社を対象にしているか」にあります。
| 経営改善計画策定支援(405事業) | 早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業) | |
|---|---|---|
| 対象 | 金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者 | 資金繰りの管理や自社の経営状況の把握など、基本的な経営改善に取り組む中小企業者等 |
| 補助率 | 3分の2 | 3分の2 |
| 上限額 (通常枠) |
DD・計画策定支援費用 200万円 伴走支援費用 100万円 金融機関交渉費用 10万円 |
計画策定支援費用 50万円 伴走支援費用 30万円 +企業概要書作成費用・金融機関交渉費用 各10万円(条件あり・後述) |
※ 上記は中小企業庁が公表している通常枠の金額です(経営改善計画策定支援に関する手引き2026年5月1日改訂/早期経営改善計画策定支援に関する手引き2026年3月31日改訂の時点)。上限額は改訂されることがあり、都道府県の協議会サイトには改訂前の金額が残っている場合もありますので、実際の申請時は中小企業庁の最新の手引きと、お住まいの都道府県の中小企業活性化協議会で必ずご確認ください(出典:中小企業庁ウェブサイト「経営改善計画策定支援」「早期経営改善計画策定支援」および各手引き)。
経営改善計画策定支援事業(405事業)とは
中小企業庁の説明では、405事業は「金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者」を対象とし、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援する事業とされています。事業者が支援機関に支払う費用の3分の2を、中小企業活性化協議会が負担します。
▶ 金融支援を前提としている
ここでいう金融支援とは、返済条件の変更(リスケジュール)など、金融機関の協力を得て資金繰りの安定を図る取組を指します。すでに銀行との調整が避けられない局面で使われる制度といえます(リスケジュールの仕組みと交渉のポイント)。
▶ 通常枠と中小版GL枠がある
通常枠の上限額は、DD(事業・財務の状況に関する調査分析)・計画策定支援費用が200万円、伴走支援費用(モニタリング費用)が100万円です。加えて、経営者保証の解除を目指した計画を作成して金融機関交渉を行う場合には、金融機関交渉費用が上限10万円まで対象になります(任意)。
さらに、中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小版GL)にもとづく計画を策定して本格的な事業再生や廃業に取り組む場合は「中小版GL枠」があり、DD費用等が上限300万円、計画策定支援費用が上限300万円、伴走支援費用が上限100万円とされています。中小版GLを含む私的整理の枠組みは私的整理ガイドラインと特定調停スキームの違いもあわせてご覧ください。
早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)とは
一方のVアップ事業は、「資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等」が対象です。認定経営革新等支援機関の支援を受けて、資金繰り計画・ビジネスモデル俯瞰図・アクションプランといった内容の計画を策定し、その費用の3分の2が補助されます。計画策定後は、進捗と実績の差異の確認や金融機関等への報告といった伴走支援が続きます。
上限額は、通常枠で計画策定支援費用が50万円、伴走支援費用が30万円です。手引きでは、事業承継先探索に伴う企業概要書作成費用と、経営者保証の解除に向けて金融機関との交渉に弁護士等を活用する場合の金融機関交渉費用について、それぞれ10万円を上限に加算できるとされています(この加算は、金融機関以外の認定経営革新等支援機関が支援する場合の枠として案内されています)。405事業より小さいのは、DDを伴う本格的な再生計画ではなく、より早い段階の「見える化」を想定した制度だからだと考えられます。
▶ 通称が「ポスコロ事業」から変わった
通称は2025年4月1日付で「ポスコロ事業(ポストコロナ持続的発展計画事業)」から「Vアップ事業(バリューアップ支援事業)」に変更されました(中小企業庁が2025年3月18日に公表)。別の制度ではなく、同じ制度の呼び名が変わったものです。変更の経緯と背景は早期経営改善計画とは?ポスコロ改めVアップ事業を解説で詳しく取り上げています。
どちらを検討すべきか
判断の目安は、金融機関の協力(返済条件の変更など)が必要かどうかです。銀行との調整が避けられないなら405事業、返済は続けられているが将来に不安があり資金繰りを見える化したい段階ならVアップ事業、という整理になります。
ただし、どちらに当てはまるかは決算内容や借入の状況によって変わります。申請は都道府県の中小企業活性化協議会を窓口に、認定経営革新等支援機関と進めます。計画そのものの作り方は経営改善計画書の作り方|銀行が納得する書き方のコツをご覧ください。
なお、いずれの制度も利用申請と支払申請が必要で、認定経営革新等支援機関との連名申請や、金融機関への事前相談書の添付といった要件が定められています。費用の負担は中小企業活性化協議会が適切と判断した場合に行われるため、申請すれば必ず補助が受けられるというものではありません。
制度の使い分けにお悩みの経営者様へ
これらは専門家に支払う費用の一部を国が補助する制度であり、使うこと自体が目的ではありません。大切なのは、自社がいまどの段階にあり、金融機関に何を示す必要があるのかを見極めることです。判断を先延ばしにするほど、選べる手段は少なくなっていきます。
オフィスレナセルは、事業再生コンサルティング会社として、現状の整理から経営改善計画の策定、金融機関との交渉の進め方まで伴走してご支援しています。どう進めるべきか迷われている段階でも構いませんので、お早めにご相談ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。補助の要件・上限額・手引きの内容は改訂されることがありますので、実際の制度の利用にあたっては、中小企業庁および中小企業活性化協議会の最新の公表資料をご確認のうえ、必ず認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。


