
再建型の法的整理には、民事再生と会社更生の2つがあります。大きな違いは3点。会社更生は株式会社しか使えず、経営権が管財人に移り、担保権者も手続に取り込まれるのに対し、民事再生は法人・個人を問わず使え、原則として経営者が残り、担保権は手続の外で行使されます。「うちの規模では会社更生は関係ない」と考えられてきましたが、東京地方裁判所は令和7年4月から、負債総額50億円未満の会社のDIP型を対象とする運用を導入しました。この記事では、両手続の違いと更生手続の流れを、条文と裁判所の公表資料に沿って整理します。
会社更生法とは?目的と対象になる会社
会社更生法(平成14年法律第154号)は、第1条で次のように目的を定めています。
この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。
ポイントは条文の冒頭にある「窮境にある株式会社について」という限定です。会社更生法に基づく更生手続を使えるのは株式会社だけで、合同会社や医療法人、個人事業主は対象になりません(信用金庫などの協同組織金融機関や保険相互会社については、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律に別の定めがあります)。一方の民事再生法は第1条で「経済的に窮境にある債務者について」と定めており、法人の種類を問わず、個人も利用できます。この入口の違いが、両者を分ける最初の分岐点です。
なお、裁判所を使わずに債権者と個別に話し合う方法もあります。手続の全体像は私的整理とは?裁判所を使わずに会社の借金を整理する方法を解説もあわせてご覧ください。
民事再生との4つの違い|経営権・担保権・株主・可決要件
違い① 経営権が管財人に移るかどうか
会社更生法第72条第1項は「更生手続開始の決定があった場合には、更生会社の事業の経営並びに財産……の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属する」と定めています。経営者は原則として経営から離れることになります。
対して民事再生法第38条第1項は「再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産……を管理し、若しくは処分する権利を有する」と定めます。東京地裁民事第20部(倒産部)も、通常の民事再生では「再生債務者を監督する監督委員が選任されますが、経営者は交代しません」と説明しています(例外的に管財人が選任される管理型もあります)。
違い② 担保権が手続に取り込まれるかどうか
実務上、最も影響が大きいのがこの点です。民事再生では、抵当権などの担保権は「別除権」とされ、民事再生法第53条第2項により「別除権は、再生手続によらないで、行使することができる」とされています。つまり担保に入っている工場や不動産は、再生手続の外で競売に進められる可能性が残ります。
会社更生では、担保権の被担保債権は「更生担保権」として手続の中に取り込まれます。東京地裁の解説でも、更生手続開始後は債権も担保権も原則として「更生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為……をすることができなくなります」とされ、他の倒産手続・保全執行手続に加えて国税滞納処分等も禁止または中止されます。事業に不可欠な資産を担保に取られている会社にとって、この違いは決定的です。
違い③ 株主の権利まで手続の対象になる
会社更生では、更生計画で株主の権利も変更の対象になります。会社更生法第2条第2項は更生計画を「更生債権者等又は株主の権利の全部又は一部を変更する条項……を定めた計画」と定義しており、決議も更生債権・更生担保権・株式を別の種類の権利に分けて行われます。オーナー経営者にとっては、持株の扱いまで含めて手続に乗るという意味になります。
ただし、同法第166条第2項は「更生会社が更生手続開始の時においてその財産をもって債務を完済することができない状態にあるときは、株主は、議決権を有しない」と定めています。実際に会社更生の申立てに至る場面は債務超過であることが多く、その場合、株主は権利を変更される側でありながら、決議には加われないことになります。「自分の持株で計画を止められる」とは考えないほうが実態に近いといえます。
違い④ 計画案が可決される要件
民事再生法第172条の3第1項は、再生計画案の可決に「議決権者(債権者集会に出席し、又は……書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意」と「議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意」の両方を求めています。頭数と金額の二重の要件で、頭数の母数は届出をした債権者全員ではなく、集会に出席するか書面等投票をした人に限られます。
会社更生法第196条第5項は、権利の種類ごとに次の同意を求めています。
- 更生債権:議決権の総額の2分の1を超える同意
- 更生担保権:期限の猶予にとどまる計画案は3分の2以上、減免などその他の方法で権利に影響を及ぼす計画案は4分の3以上、事業の全部廃止を内容とする計画案は10分の9以上
- 株式:議決権の総数の過半数
担保権者の権利を削る計画ほど高い同意率が必要になる構造です。担保権者を手続に取り込める代わりに、その同意のハードルは高い——これが会社更生の設計思想だと理解しておくと、専門家との打ち合わせが進めやすくなります。
| 比較項目 | 会社更生 | 民事再生 |
|---|---|---|
| 使える主体 | 株式会社のみ | 法人・個人を問わない |
| 経営権 | 管財人に専属(72条1項) | 原則として経営者が継続(38条1項) |
| 担保権 | 更生担保権として手続内 | 別除権として手続外で行使可(53条2項) |
| 株主の権利 | 更生計画で変更の対象 | 原則として手続の対象外 |
| 可決要件 | 権利の種類ごと(1/2超〜9/10以上) | 頭数の過半数かつ議決権総額の1/2以上 |
更生手続の流れ|申立てから終結までの8つの段階
裁判所の説明によれば、会社更生手続は一般的に次の流れで進みます。
▶ ①申立て → ②保全措置 → ③開始決定 → ④債権の届出・調査・確定 → ⑤財産評定 → ⑥更生計画案の提出・決議・認可 → ⑦更生計画の遂行 → ⑧終結
②の保全措置には、保全管理命令、調査命令、弁済禁止等の保全処分、他の手続の中止命令、包括的禁止命令などがあります。申立てから開始決定までの間に会社の財産が散逸することを防ぐ仕組みで、この段階で保全管理人が選任されると、経営権はその時点で保全管理人に移ります(会社更生法第32条第1項)。
⑤の財産評定は、会社の資産を手続開始時の時価で評価し直す作業です。更生担保権として扱われる範囲は、担保目的物の時価で担保される部分までとされているため(同法第2条第10項)、この評定結果が計画づくりの土台になります。申立ての手数料は収入印紙2万円分と案内されていますが、これとは別に予納金が必要で、金額は事案の規模によって変わります。
中小企業にも道が開いた「小規模会社更生」(令和7年4月〜)
会社更生は手続が重く、大企業向けというのが従来の理解でした。その前提が変わりつつあります。東京地方裁判所民事第20部は、次の運用を公表しています。
令和7年4月から、負債総額50億円未満の会社のDIP型を対象として、簡易・迅速な会社更生手続(DIP型)の運用(以下「小規模会社更生」といいます。)を導入しました。
裁判所は、この小規模会社更生の特徴を「民事再生事件と同程度の標準スケジュールに従った迅速な手続進行をする点にある」と説明しています。また費用面でも、資金繰りが厳しくDIPファイナンスや事業譲渡の見通しがあるような場合には、予納金の分納を柔軟に認めるとされています(計画案提出までが長期化した場合などは追納が必要になることがあります)。
DIP型は、従来の管理型と異なり現経営陣が経営に関与したまま進む形です。ただし誰でも使えるわけではなく、裁判所が公表している小規模会社更生の資料では、要件として「①現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと、②主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと、③スポンサーとなるべき者がいる場合はその了解があること、④現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が認められないこと」が挙げられています。裏を返せば、これらを満たせる状態で相談に入れるかどうかが分かれ目になります。「担保権者を手続に取り込みたいが、経営から完全に離れるのは避けたい」という場面で、選択肢として検討する余地が出てきたことになります。ただし東京地裁の運用であり、どの裁判所でも同じ扱いになるとは限りません。実際の可否は、必ず弁護士に確認してください。
その前に検討できる手段もあります
法的整理は、取引先や金融機関に手続の開始が知られることを避けられません。信用への影響を抑えたい段階であれば、中小企業活性化協議会とは?事業再生の公的窓口と支援の流れを解説で紹介した公的窓口や、第二会社方式とは?事業だけを残して借金を整理する方法、事業譲渡で借金を整理する|M&Aによる事業再生の選択肢と流れといった手法が先に来ることが多いのが実情です。再建型と清算型の分かれ目については民事再生と破産の違い|会社を続けたい経営者が知るべきことと廃業と倒産の違いとは?会社をたたむ前に知る解散・清算もご覧ください。
どの手続が自社に合うか、整理からご相談ください
会社更生と民事再生のどちらを選ぶかは、担保の付き方、株主構成、スポンサーの有無、そして手元資金があと何か月もつかによって変わります。制度の優劣ではなく、自社の事情にどちらが噛み合うかという問題です。オフィスレナセルは、法人・会社の借金問題に向き合う事業再生コンサルティングとして、財務の実態把握から金融機関への説明の組み立て、弁護士など専門家との連携までを経営者に伴走してご支援しています。手続を選ぶ前の段階でも構いません。まずはオフィスレナセルまでお気軽にご相談ください。
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。法的整理の手続選択や要件の当てはめ、裁判所ごとの運用は個別の事情によって異なり、実際の手続の申立てにあたっては、必ず認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。


