
「銀行から資金繰り表の提出を求められたが、どう作ればよいか分からない」「決算書は税理士に任せているが、資金繰り表は自社で作る必要があるのか」——資金繰りが厳しくなった局面で、こうしたご相談は少なくありません。資金繰り表は、金融機関との対話において、決算書だけでは伝わらない「現金の動き」を示す資料です。この記事では、資金繰り表の基本的な作り方と、銀行が実際にどこを見ているのかを、事業再生の実務の観点から解説します。
資金繰り表とは何か
資金繰り表とは、一定の区分・科目に基づいて、一定期間のすべての現金収入と現金支出を分類・集計し、現金収支の動きや現金の過不足の実態を把握できるようにした表です(中小企業基盤整備機構 J-Net21 の解説による)。
損益計算書は「利益が出ているか」を示しますが、売掛金の回収サイトや手形の期日、借入金の返済といった現金の出入りのタイミングまでは表れません。黒字であっても現金が足りなくなることがあるのは、このためです。資金繰り表は、その「いつ・いくら現金が動くのか」を可視化する資料といえます。
収支は3つに分けて整理する
資金繰り表を作るうえで基本となるのが、収支を次の3つに区分する考え方です。この3区分で構成することが重要とされています。
▶ 経常収支
本業にともなう現金の出入りです。現金売上、売掛金の回収、手形の期日入金といった収入と、現金仕入、買掛金の支払、人件費やその他の経費、支払利息などの支出が該当します。ここがプラスかマイナスかが、事業そのものが現金を生めているかを示します。
▶ 経常外収支
設備投資や資産の売却など、日常の営業活動以外の現金の動きです。
▶ 財務収支
資金調達に関する動きです。借入れや手形割引による入金がプラス、借入金の返済がマイナスとして表れます。
作り方の基本|公的機関の様式を活用する
資金繰り表に法律で定められた決まった様式はありませんが、ゼロから作る必要もありません。日本政策金融公庫は、資金繰り表のExcelテンプレートや記入例、簡易版の様式を公式サイトで公開しています。まずはこうした公的機関の様式をもとに、自社の科目に合わせて調整するのが現実的です。
実績と予定の両方を入れる
資金繰り表には、通常「実績」と「予定」の欄があります。過去の実績があることで、予定の数字に説得力が生まれます。とくにリスケジュール(返済条件の変更)の相談では、直近6か月程度の実績と、変更後6か月程度の見通しを示すことが求められる場合があります。
漏れなく、現実的な数字で
入出金に漏れがないこと、そして数字が現実的であることが確認されます。売上の見込みを楽観的に置きすぎると、かえって計画全体の信頼性を損なうことになりかねません。税金・社会保険料の納付、賞与、決算賞与など、月ごとに偏る支出も忘れずに織り込みます。
資金繰りが厳しい局面で、まず何から着手すべきかについては資金繰りが厳しいとき、まず何をすべきか?3つのステップもあわせてご覧ください。
銀行は資金繰り表のどこを見ているか
金融機関が資金繰り表で確認しているのは、おおむね次のような点だとされています。
▶ 資金ショートの可能性と時期
いつ、いくら足りなくなるのか。そして、その不足額が追加の融資などで対応できる範囲かどうかが見られます。
▶ 売上・経費の見込みが妥当か
予定の数字が、過去の実績や受注状況から見て現実的かどうかが確認されます。
▶ 本業の収支で返済ができるか
経常収支がプラスで、そこから借入金の返済を賄えるのか。ここが恒常的にマイナスであれば、事業構造そのものの見直しが必要という判断につながります。債務者区分の考え方は銀行の債務者区分(格付け)とは?5つの区分と改善のポイントで解説しています。
▶ 経営改善計画と数字が整合しているか
リスケジュールの交渉では、経営改善計画と資金繰り表をセットで示すことが重要になります。両者の数字が食い違っていると、計画の実現性そのものが疑われかねません。計画書の作り方は経営改善計画書の作り方|銀行が納得する書き方のコツを、交渉時に揃える資料は銀行との交渉を有利に進めるために準備すべき5つの資料をご参照ください。
資金繰り表の作成と金融機関対応にお悩みの経営者様へ
資金繰り表は、単なる提出書類ではありません。自社の現金がどこで詰まっているのかを経営者自身が把握し、金融機関と同じ土俵で対話するための土台になります。とはいえ、日々の経営のかたわらで、実績を整理し、根拠のある見通しを立てるのは容易ではありません。
オフィスレナセルは、事業再生コンサルティングとして、資金繰り表の作成支援から、経営改善計画の策定、金融機関との交渉の進め方まで、経営者様に伴走してご支援しています。返済条件の変更を含めた対応をご検討の際は、リスケジュールの仕組みと交渉のポイントもご覧いただいたうえで、お早めにご相談ください。状況が深刻になる前にご相談いただくほど、選択肢は多く残されています。
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。実際の資金繰り表の作成や金融機関との交渉にあたっては、必ず認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。


