実質破綻先(じっぱ)とは?分類されたらどうなるかと再建の選択肢を解説

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「うちは実質破綻先に分類されているのではないか」。取引銀行の対応が急に硬くなったとき、そう感じる経営者は少なくありません。実質破綻先とは、法的な倒産手続には入っていないものの、実質的に経営破綻に陥っていると金融機関が判断した債務者の区分です。まず押さえておきたいのは、これは銀行内部の評価であり、分類されたからといって会社が自動的に倒産するわけではないということ。ただし新規の融資は極めて難しくなり、時間の経過とともに選べる手段は減っていきます。この記事では、実質破綻先の定義と分類後に起きること、そして再建に向けた選択肢を整理します。

実質破綻先(じっぱ)とは?債務者区分のなかでの位置づけ

金融機関は融資先を自己査定によって区分しています。金融庁が公表していた金融検査マニュアル(2019年12月18日に廃止)の別表1では、実質破綻先を次のように定義していました。

法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者

具体例としては、事業を形式的には継続しているものの、返済能力に比して明らかに過大な借入金が残り、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っていて事業好転の見通しがない、といった状況が挙げられています。なお金融機関の実務では「実破(じっぱ)」と略して呼ばれることがあり、「じっぱに分類された」という言い回しを耳にすることもあります。

区分は上から順に、正常先・要注意先(うち要管理先)・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先と並びます。5つの区分の全体像と、上位区分へ改善するための着眼点は銀行の債務者区分(格付け)とは?5つの区分と改善のポイントで詳しく解説しています。

破綻懸念先との違いは「再建の見通し」

ひとつ上の破綻懸念先は、同じ別表1で「現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)」と定義されていました。

つまり破綻懸念先は「このままでは危ない」、実質破綻先は「再建の見通しが立たない」という評価です。両者を分けているのは赤字額の大小そのものではなく、再建の道筋を示せているかどうか。ここが、経営者の側から働きかけられる余地でもあります。

実質破綻先に分類されると何が起きるか

▶ 銀行側では損失があらかじめ見込まれる
第二東京弁護士会 倒産法研究会の解説では、担保によって保全されていない貸付金の引当金について「大体次のような数値イメージ」として、実質破綻先・破綻先はいずれも引当率100%と示されています。同解説は、引当金は基本的に過去の貸倒実績率により見積もられるため個々の金融機関によって異なるとも述べており、一律に決まる数字ではありません。それでも、担保でカバーされない部分の損失が織り込まれた状態であることに変わりはなく、対応は新規の支援ではなく保全と回収に向かいやすくなります。

▶ 新規融資は事実上、期待しにくくなる
追加融資を実行すれば、その分も同じように引当の対象となり得ます。個別の判断は金融機関ごとに異なりますが、一般に新規融資は極めて難しくなると考えておくべき段階です。

▶ 保証協会付き融資や他行との関係にも波及しやすい
延滞が続けば期限の利益を失い、信用保証協会付きの融資では代位弁済に進むことがあります。取引行が複数ある場合、1行の対応の変化が他行の姿勢に影響することも珍しくありません。

一方で、分類はあくまで金融機関内部の評価です。分類されたこと自体が公表されるわけではなく、その時点で法的手続が始まるわけでもありません。過度に悲観するのではなく、残された時間で何ができるかを冷静に洗い出すことが先決です。

検査マニュアル廃止後も、債務者区分はなくなっていない

債務者区分の考え方が広まったきっかけは、上でも触れた金融検査マニュアルでした。金融庁のサイトには「※これらの文書は令和元年12月18日に廃止しました。」と記載されています。

では区分もなくなったのかというと、そうではありません。金融庁は、同じ日に公表した「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」について、引当・償却は「現状の実務を否定するものではなく、現在の債務者区分を出発点に、現行の会計基準に沿って」進めるとしています。自己査定の枠組みは実務に残っており、そのうえで各金融機関が自らの融資方針や債務者の実態を踏まえて信用リスクを反映していく、という整理です。裏を返せば、実態をどう伝えるかによって評価が変わる余地があるということでもあります。

金融機関は「再建計画」をどう見ているか

先に前提をはっきりさせておきます。実質破綻先から区分が戻るための基準そのものは、公表資料のなかに見当たりません。公表されているのは、ひとつ上・ふたつ上の区分について金融機関が計画をどう評価するかの考え方です。それでも、自社の計画をどの水準まで作り込むべきかの目安にはなります。

破綻懸念先から要注意先へ=合実計画

前掲の第二東京弁護士会 倒産法研究会の解説では、中小企業について「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」(合実計画)が策定されているときは、「金融機関の自己査定における債務者区分について、破綻懸念先から要注意先にランクアップすることができるとされています」と説明されています。

また金融庁の「貸出条件緩和債権関係Q&A」では、この合実計画について「金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能となる場合」は「計画終了時点における債務者区分が要注意先でも差し支えない」とされています。計画の終着点が必ずしも正常先でなくてよい、という緩和です。

要管理債権から上がるための実抜計画(参考)

同じQ&Aには、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」(実抜計画)の要件も示されています。こちらは「当該企業に対する債権が貸出条件緩和債権(要管理債権)から上方遷移するために再建計画が満たすべき基準」であり、実質破綻先にそのまま当てはまるものではありません。ただし、金融機関が計画のどこを見ているかが具体的に書かれているため、参考になります。実現可能性が高いといえるための要素は次の3点です。

  • 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
  • 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
  • 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること

抜本的といえるための目安は「概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先となること」とされ、中小企業についてはリストラの余地が小さいことを踏まえ、「計画期間が概ね5年以内(5〜10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む)で、計画終了後正常先となる経営改善計画」であれば差し支えないとされています。

「関係者の同意」「支援額の確定」「厳しめの前提」という3点は、区分を問わず金融機関が計画を見るときの共通の目線です。計画書の具体的な作り方は経営改善計画書の作り方|銀行が納得する書き方のコツを、公的な支援制度を使う方法は中小企業活性化協議会とは?事業再生の公的窓口と支援の流れを解説をご覧ください。

「実質破綻先」と言われても、打てる手はある

再建の見通しが立たないと評価されている状態でも、選べる手段が消えたわけではありません。

▶ 事業を切り離して残す
採算の取れる事業だけを別会社に移し、旧会社を清算する手法があります。詳しくは第二会社方式とは?事業だけを残して借金を整理する方法で解説しています。

▶ 法的整理を含めて比較する
再建型と清算型では、その後に残せるものが大きく変わります。判断材料は民事再生と破産の違い|会社を続けたい経営者が知るべきことにまとめています。

▶ 経営者個人の生活再建も同時に考える
経営者保証に関するガイドラインを活用できる場面もあります。要件は経営者保証ガイドラインの活用条件とは?3つの要件を解説で確認してください。

いずれも、資金が完全に尽きてからでは選べる幅が狭くなります。早い段階で手元資金と債務の全体像を把握しておくことが、選択肢を残す条件になります。

区分が下がってからの立て直しをご相談ください

債務者区分は、経営者が直接見ることのできない評価です。それだけに、銀行の反応から自社の位置を読み取り、どの順番で何を示すかを組み立てる作業には経験がものを言います。オフィスレナセルは、法人・会社の借金問題に向き合う事業再生コンサルティングとして、財務の実態把握から金融機関との交渉方針の整理、専門家との連携までを経営者に伴走してご支援しています。「もう手遅れかもしれない」と感じている段階でも構いません。まずはオフィスレナセルまでお気軽にご相談ください。

【免責事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法的・会計的判断を保証するものではありません。債務者区分の判断や引当の取扱い、経営改善計画の評価は金融機関ごとに異なり、実際の再建手続の選択にあたっては、必ず認定経営革新等支援機関の税理士・公認会計士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事の内容に基づく判断によって生じたいかなる損害についても、当社は責任を負いかねます。